創造への渇望 First Trio concert with Petar Ralchev in Bulgaria
- Mie Ogura-Ourkouzounov
- 2019年12月3日
- 読了時間: 5分

Many people said to me that "I can't believe my ears!" after this concert. And me too!
「今だ耳が信じられなんだよ、、、」
昨日のコンサートを聴いてくれた多くの人がそう言ってくれた。忘れられない化学反応の夜となった11月28日。「私も、何が起こったのかよく分からないんですよ、、、ただ必死にに彼のやることについて行っただけで」これが私に言える正直な感想というところだ。
その彼、とはブルガリアを、いや世界を代表する偉大なアコーディオン奏者、ペーター・ラルチェフさん。
3月30日にパリで初めて一曲我らデュオとショッキングな共演してからというもの、先日のコンサートに向けて、自分たちなりにコツコツ研鑽を積んできた。
そしてブルガリア到着から3回のリハを経て本番を迎えた。

28 November Ourkouzounov Duo with Petar Ralchev in Pleven guitar festival, Bulgaria.
ど ういうリハかというと、私たちが練習してきた彼の曲2曲と、イヴォ・パパゾフの曲の構成をしっかり決めて、どこで誰の即興をどの順番で入れるのか、どこで 転調させるのか、リピートフレーズ(各自の即興の間に挿入する短いフレーズ)は何をどこで使うのか?などを一緒に決める。
この種の音楽においては、即興演奏が全体の80%以上を占める。よって即興中にどんなアクシデントが本番中起こっても、それに対応させてどんどん自由に変えていこう。これは彼が何度も念を押したことだった。

We had to give all our wisdom and power to answer his phrases.
実 際、こんなに自分の出来ることを、出して、出して、これでもか!とひっくり返すようにして出し切ったのは、人生初めての経験だった。出しても出しても、ま だまだ!!とまたペーターさんに追い立てられるのだ。もっと速く、或いはもっと遅く、もっと何か違うことを、もっと素晴らしい何かを!!彼はとてつもなく 高いレベルにいながら、ステージ上でさらに違うものを渇望していた。この創造への渇望こそが、私に火を焚き付けるんだと思う。それは音の洪水を導き出し て、その渇望に応えるために知恵と体力を振り絞らなければならなかった。彼は、私たちがどんな失敗をしようと、失敗を材料に音楽に変えてしまうし、どんな 調になっていようとも、好きなように転調してどこにでも持っていくことができた。しかも100通り以上の方法をもってだ。これには舌を巻いた。気をつけて いないとステージ上で聴衆になってしまう!

I became a audience sometimes on the stage...ステージ上の特等席で鑑賞中(笑)
必 死で彼のフレーズを追いかけ回し、気がつくと満員のブルガリアの300人の聴衆が立ち上がって、スタンディングオベーションに沸いていた。驚くべきことに 聴衆は、音楽に巻き込まれて一緒に呼吸し、本当に笑ったり息をのんだりしていた。それがあまりにも次に何が起こるのか想像つかないものだったから。私たち は未知の音楽の力に圧倒されてボーゼンと、鳴り止まない拍手と声援に包まれて舞台に立っていた。
自分が空になるまで出し切ったそこにはもうエゴのカケラも残ってなく、宇宙の愛に包まれているような、気分になるんだな。初めて感じた透明な気持ちだった。

Standing ovation!! Full of energy of the audience in Pleven!
こ れこそがインプロビゼーションの醍醐味。その感覚を愛し、これが自分の道だと信じて色んな即興音楽を勉強してきて、世界で数えられるほどの即興の巨匠と共 演できて、そしてその瞬間がこんなにも素晴らしいものだとは、考えもしなかったな。たった数音のあの時出会ったカヴァルの音が、私をここまで運んできた。 この出会いをインスピレーションでセッティングした相方のアタナスの直感が繋いでくれた。

Thank you for all... Petar, Niki, Mimi and all who shared this bright moment!
「なんだかアタナスはペーターに性格がそっくりなのよね、心配性で神経質で。次は何を言うか想像つく(笑)」とペーターの奥さんが言っていたが、聞けば二人とも乙女座で、誕生日が一日違いなのだとか。
ペーターさんがソロをやっている間、舞台袖でアタナスが「この人子供みたいで、即興始めたらやめられないんだよね(笑)まるでミエと一緒だ」
この人はインプロビゼーションが3度の飯より好きなんだ。
結局私たち3人はどこかで繋がった似た者同士なのかも知れない。
そ の夜、後でペーターさんと話していて、「あなたとパパゾフとの演奏、何度も何度もヴィデオで見てるんです。もうあれは素晴らしくて、雲の上です」って言っ たら、「でも、ブルガリア人同士だと、みんな決まった応え方をするんだ。あなたは、自分の言葉で、とてもインテリジェントな方法で自分に応えてくれている よ。私はそれを素晴らしいと思う」と言ってくれた。

After the concert at Kailka Dom in Pleven
コ ンサートのあとで、「ミエ、あんたにブルガリアンパスポートを贈呈する笑!」と言ってくれた人がたくさんいたけど、私は本当は知っている。私はブルガリア 音楽をブルガリア人のようには出来ない。でもその伝統を勉強し尊重しながら、伝統には留まらない違う何かを演奏することはできる。
グローバルよりもっと凄い、ユニバーサルなるもの?!それは今、私たちが生きている世界が繋がれるこの時代にしか創造できない音楽。私はブルガリア人ではなく、日本人として、それをやる。ブルガリアのパスポートをくれるのは、有難いけれど(笑)
次のコンサートまでに、私はまた自分に無限にある引き出しをいっぱいいっぱいにしておかなければならない。
そのためには一瞬一瞬をちゃんと生きることが大事になるし、またたくさんたくさんの音楽を吸収し練習しなければならない。
これはどうやら単なる始まりでしかないらしい。末恐ろしいこのトリオ、始動です!!名前は未定。
実際に、先日コンサートを聴いてくれた人たちが数人、もはや動いてくれているんですよ。これは何か大変なことが起こっている、これは絶対にまた、2回目、3回目とやらなければいけないって、危機感を覚え、スポンサーまで現れている模様!(笑)
繋がれ、繋がるんだーみんな!
未知の音楽に向けて、大きなエネルギーの環が出来つつある。

See you next time! At Sofia airport








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